田中エキスパート

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SE的視点で考えたドラえもんの必要性

A「あ〜、ドラえもんさえ居れば何でもできるのにな〜」

B「必要なのはドラえもんじゃなくて四次元ポケットとひみつ道具だろ?」

A「たしかに、道具さえあれば問題ないな」

B「むしろドラえもんいらなくね…?」

 

ドラえもんを見ていると必ずと言っていいほど発生するこの命題をSEの視点で考えてみたいと思います。

※「ドラえもん のび太の日本誕生」の内容に触れているため、「ドラえもん のび太の新・日本誕生」のネタバレを含んでいる可能性があります。

 

 

 

▪️そもそもドラえもんは何をしているのか?

ドラえもんの主な任務は問題(主にジャイアンのイジメ)に直面したのび太ひみつ道具を貸し与え問題を解決する事だ。その大まかな流れは以下の通り。

 

のび太ドラえもんに泣きつく(問題発生の報告)

のび太が何をしたいかをドラえもんに伝える(主にジャイアンへの復讐)

ドラえもんが問題解決のために必要な道具を四次元ポケットから取り出す

ドラえもんのび太ひみつ道具の使用方を説明して貸し与える

のび太が貸し出されたひみつ道具を使用して目的を達成する(または失敗する)

 

この場合、⑤で目的を達成するための機能を有しているのはドラえもんではなくひみつ道具だ。確かにひみつ道具ドラえもんから貸与された物だが、そもそもこれらの道具は未来デパートで普通に販売されている商品であり、22世紀ではお金さえあれば誰にでも手に入れられる代物である。

チンプイやモンガーなども超常的な能力で主人公の問題解決を行ってくれる存在だが、彼らが問題解決に用いる能力は本人に備わっている能力であり他人に貸与できない点がドラえもんひみつ道具と決定的に異なる。

 

そう考えると、やはりのび太にとって重要なのはあくまで「ひみつ道具」の存在であってドラえもんは必須の存在ではないと感じてしまうのも無理はない。

 しかし、実は実際にひみつ道具を使用する前段階である②〜④のプロセスにこそドラえもんの存在意義を知る重要なポイントが隠されている。


 

▪️ドラえもんの機能とは

ではドラえもんが居なかった場合どのような事態が発生するだろう?のび太は果たしてドラえもんが居た時と同じように問題解決が可能だろうか?

実は仮にスペアポケットなどが手元にありひみつ道具「だけ」が自由に使える環境にあった場合、ひみつ道具を用いての問題解決は極めて困難になる。なぜならば道具だけが目の前にあっても使い方や注意事項がわからないため、その機能を十分に活かすことができないからだ。そもそも、山のように存在するひみつ道具の中から自身の問題解決に必要な道具を選ぶ事すらままならないだろう。

 

そう、ドラえもんの機能とは利用者の問題解決に必要な機能を有した道具を適切に選定し、初めて見る道具の使い方や注意事項を的確に伝える「ユーザーインターフェイス」であると言える。(事実20世紀人はタケコプターですらドラえもんのレクチャー無しには満足に使いこなせていない)

ドラえもん抜きで10000個のひみつ道具を所有するよりも、ドラえもんドラえもんが厳選した100個の道具の方が、確実に問題解決の役に立つ事は間違いない。

 

 

▪️ドラえもんを使う能力

ドラえもんというインターフェイスを通じて様々なひみつ道具を使いこなすことに天才的な能力を発揮する人物がいる。

 

そう、野比のび太だ。

 

のび太は作中(TVシリーズ)では頭を使うことも体を使うことも他人に大きく遅れをとった存在として描かれている。しかし、彼は「何かを使って何かをする」という能力=「使う」能力に大変長けている。

その能力の発揮で特に注目したいのが、今春公開される映画「ドラえもん のび太の新・日本誕生」の第1期版「ドラえもん のび太の日本誕生」だ。

この作品では好みの遺伝子アンプルを用いて卵から動物を生み出すことができる「クローニングエッグ」というひみつ道具が登場する。劇中のドラえもんの説明でも好みの動物を生み出せる事しか説明されなかった事から、この道具を発明した未来の科学者も「短期間で家畜を量産して食料問題を解決できる」程度の利用価値しか見出していなかったのだろう。

 

しかし、のび太ドラえもんの説明からクローニングエッグの仕様を理解し、その仕様を応用する事で天然には存在しない架空の動物達(ポスターに載っているペガサス・ドラゴン・グリフィン)を創造する事に成功した。

 まさに、のび太の「使う」能力がいかん無く発揮された名シーンだと思う。

 

 

▪️未来の世界で花開くのび太の能力

のび太は自分自身で直接何かをする能力は極めて低い、素手でのケンカではジャイアンに到底かなわない、勉強においても出来杉と比べるべくもなく落ちこぼれだ。

 

 しかし、「使う」能力に長けたのび太はショックガン等の道具を用いた戦闘では比類なき強さを発揮する。人間個人の体力的な問題は時代が進めば進むほど技術によってカバーされていく傾向にあるため、そう遠くない未来においてジャイアンのび太の力関係は逆転してしまうだろう。 

一方勉強というジャンルでは出来杉の優位性が下がるとは考えにくい。しかし、のび太はテストの点を取ることは苦手だが決して「バカ」ではない。のび太の能力をうまく引き出す機能を備えた未来の文房具を手にした瞬間大化けする可能性は十分にある。

 

人間が個人の力で直接出来る事には限界がある、しかしユーザーインターフェイスを通じて間接的に様々な道具を使いこなすことができる世界ならば、人間が出来る事は無限に広がる。それがドラえもんという(現代から見ると)この上なく優秀なインターフェイスと、超常的な機能を備えたひみつ道具であればなおのことだ。

 

ひみつ道具のび太インターフェイスとなり両者の能力を最大限に発揮させる。それこそが、ドラえもんの存在意義なのだ。

 

 

▪️おわりに

ドラえもんの連載が始まったのは1969年、まだ一般にはユーザーインターフェイスという概念どころかコンピューター自体全く普及していない時代です。この時代にのび太(ユーザー)とひみつ道具(機能)の仲介をする存在(インターフェイス)という役割をドラえもんに与えた藤子・F・不二雄先生は本当に偉大な方だと思います。

 

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